ANA大阪空港株式会社
旅客サービス部
松浦さん

小学生の頃、空港で出会ったグランドスタッフの姿に「かっこいい!」と心を動かされた松浦さん。その憧れは、広告代理店、ホテルのウェディングプランナーという別の道を歩んでいる間も、ずっと心のどこかに残っていました。
このまま「空港で働きたい」という夢を諦めたら、絶対に「あの時に挑戦すればよかった」と後悔する。そう思い、10年以上の社会人経験を経て、2024年10月にANA大阪空港へ転職。現在は大阪国際(伊丹)空港で、旅客サービスの仕事に取り組んでいます。
「飛行機だけでなく、空港そのものに魅力を感じる」と語る松浦さんに、憧れの仕事に挑戦した理由、前職で培った経験や、労働組合の活動を通じて感じている「人とのつながり」について伺いました。
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--- 空港の仕事に興味をもったきっかけは何だったんですか?
空港の仕事に憧れたきっかけは、小学生の頃の家族旅行でした。空港で好きなアイドルの等身大パネルを見つけ、写真を撮っていたとき、グランドスタッフの方が声をかけてくれました。その時に、「何?!このかっこいいお姉さん!」と思ったんです。そこから、漠然とした憧れがずっとありました。

--- グランドスタッフへの憧れはあったものの、大学卒業後すぐに目指そうとは思われなかったんですね。
はい、空港への憧れを持ちながらも、新卒では広告代理店に就職しました。その後、テレビでチャペル特集の番組を見て、ウェディングプランナーに一目惚れをし、プランナーを目指すことにしました。1年間、働きながら夜間の専門学校に通い、神戸のホテルへ転職しました。
--- そこから10年以上、プランナーの仕事に向き合われたんですね。
最初は、アルバイトで採用され、契約をとる営業の仕事からスタートしました。2年経った頃、社員になるタイミングでプランナーの仕事を任されるようになりました。新郎新婦と打ち合わせを重ね、当日まで一緒に準備を進める仕事は、喜びも大きい一方で、責任も感じていました。仕事で悩んだり落ち込んだときは、大阪国際(伊丹)空港の展望デッキまで来て、ぼんやり飛行機を眺めることもあって、空港は私の癒しスポットでした。
プランナーの仕事はとても充実していましたが、コロナ禍が過ぎて自分の人生でやり残したことを考えたときに、「空港で働くこと」が浮かび、「一か八か受けてみよう!」と思ったんです。

--- キャリア採用で応募されたんですね。
語学力への不安はありましたが、挑戦することにしました。選考で聞かれたのは、「これまでどんな経験をしてきたのか」「その経験をどう生かしたいのか」ということでした。
特に、キャリア採用では「今まで自分がやってきたこと」を、自信を持って話すことが大事だと感じました。
--- 松浦さんにとって、その自信の土台になったのが、ウェディングプランナーとして過ごした10年だったんですね。
結婚式は、お客様にとって人生で最も幸せな一日を彩る日です。思い通りに進むことばかりではありません。コロナ禍には、予定していた結婚式が延期・中止になったり、参加人数を大きく減らさなければならなかったりすることもありました。それでも、お客様の思いを受け止め、できることを一緒に探し続けた経験が、今の自分を支えてくれています。10年続けてきたからこそ、自分のキャリアを話せるようになったので、前職には本当に感謝しています。人としても、組織の中で働く人としても成長させてもらいました。

--- 前職の経験が生きていると感じるところは?
まずは「お客様への声かけ」です。旅客サービスの仕事は、カウンターでの手続き、搭乗口でのご案内、ご到着されたお客様のサポートなど、担当する場所や役割は日によって様々です。しかし、どこの担当であったとしても、困っていそうなお客様の様子を察知し、「何かお探しでしょうか?」「何かお手伝いできることはございませんか?」と、すぐに声をかけることができるのは、前職のおかげです。
--- 異業種からの転職は、決して「ゼロからのスタート」ではなかったんですね。
はい、他にもホテルでは、お客様が見えなくなるまで見送ることが自然な習慣でした。
ある時、車いすをご利用のお客様を、バス乗り場までご案内する機会がありました。目的地を確認し、一緒にチケットを購入して、バスが発車するところまで見送ったところ、後日お褒めの言葉をいただきました。会話を楽しみながら、「最後まで見送る」という感覚が染み付いていたからできたことだと思います。
空港には、旅に慣れている人もいれば、初めて飛行機に乗る人もいます。その一人ひとりの状況に合わせて、言葉や表情を変えるよう「表情管理」を意識しています。特にマスクをしているときは、表情が伝わりづらいので、目だけで笑っていることを伝えられるよう心がけています。
お子さまには、少し大きめに手を振ったり、「ありがとう」と伝えたりもします。もしかしたら、その子にとって「人生初フライト」かもしれないし、未来のグランドスタッフかもしれないですしね。
プランナーの仕事も、「一生に一回」に立ち会える仕事でしたが、旅客サービスの仕事も、お客様の人生の「初」に立ち会える仕事なんです。

--- 憧れの仕事に就いて、イメージと違ったと感じるギャップはありましたか?
入社前、「空港の仕事はルーティンが多い」と聞いていました。カウンターで同じような手続きを行い、決められた時間に飛行機を飛ばす仕事だからです。しかし、ルーティンといえばルーティンなのですが、同じお客様はいらっしゃいません。同じ便でも、昨日と今日ではお客様も、一緒に働くスタッフも違います。同じ一日はないので、いい意味でギャップを感じました。
--- どんなところにやりがいを感じますか?
「一便を飛ばした」という感覚を味わったときです。飛行機を一便飛ばすためには、本当に多くの人が関わっています。お客様と最前線で向き合う旅客サービスのスタッフ、運航乗務員、客室乗務員、整備士、オペレーションスタッフやグランドハンドリングスタッフなど、チーム全員で一便の飛行機を飛ばしているんです。それが、この会社で働く醍醐味だと思います。華やかに見える空港の仕事の裏側には、細やかな確認とチームワークがあります。

私自身、背筋が伸びるのは、国際線の乗り継ぎカウンターに立つ時間です。まさに「憧れていた世界」を実感できます。国内線とは異なり、国際線では書類や手続きが入国に関わることもあります。自分の確認や案内が、お客様の旅を支えている。ここからお客様が世界に旅立って行く。その責任の大きさが、やりがいにつながり、誇りにも感じるところです。

--- 入社して2年が経とうとしていますが、挫折を感じたことはありますか?
ありますね。前職では分からないことがほぼなくなり、後輩にアドバイスすることが多かったんです。しかし、転職してOJTの3日目、新しい職場環境や人間関係への不安と、「こんなにも自分はできないのか...」という思いに苛まれ、涙がポロポロ止まらなくなってしまいました。トイレに駆け込むと、OJTトレーナーが追いかけてきてくれ、失敗談を明かしながら励ましてくれました。「できてますよ!大丈夫」「一緒にごはん食べましょう」と声をかけてくれ、心がすっきりして、その日以降前に進むことができたので、本当にありがたかったです。
--- 社会人経験豊富な松浦さんでも、涙が止まらないこともあるんですね。
いい大人なんで、泣いたのはそのときだけですけどね(笑)。年下の先輩たちを、とても頼りにしています。
航空の仕事は安全が第一です。そのため、規定や確認事項は細かく決められています。覚えることも多く、端末操作に戸惑うこともあります。でも、周りの人が教えてくれますし、みんなで助け合う雰囲気があります。空港の仕事は、一人で完結する仕事ではありません。分からないことを聞く、困っている人をフォローする、次の担当者へ引き継ぐ。そうした小さな連携の積み重ねで、毎日の運航が支えられていると感じています。

--- 現在、仕事に加えて労働組合活動にも参加されているんですね。
組合との関わりは、前職時代からありました。コロナ禍で人員整理が必要になったとき、後輩を守りきれない悔しさを感じ、当時の会社の組合に相談したことが、組合を身近に感じるきっかけでした。今の職場でも、「機会があればやってみたい」と先輩に話したことから、執行部の活動に関わるようになりました。
活動を通じて、なかなか話す機会がなかった貨物ハンドリングやグランドハンドリングなど、ほかの部門の方とも話せるようになったのは、自分にとって大きいですね。
また、航空連合や他空港の仲間とのつながりも生まれました。同じ航空産業で働く仲間の思いや課題を知る機会にもなっています。

--- これから挑戦したいことはありますか?
現在、チーフとして、班のメンバーの育成や組織運営に関わっています。私自身が、入社してまだ日が浅いからこそ、つまずいたところを、後輩にできるだけ分かりやすく伝えたいと考えています。これまでのキャリアでも人材育成に関わってきたので、その経験も生かして育成に力を入れていきたいです。
--- 航空業界へ興味のある方へメッセージをお願いします。
「英語が不安」「今さら挑戦していいのかな」「違う業界からでも大丈夫かな」と迷う人も多いと思います。とりあえず、飛び込んでみることをおすすめします。たとえ新卒でなくても、5年後にキャリア採用でチャンスを掴むことができるかもしれません。
また、要件を満たせば社員の事情に応じてANAグループ内での転籍を可能とする「ワークプレイス選択制度」や、一度退職しても再びANAグループで活躍できる機会として「ウェルカムバック採用」が設けられていることなど、柔軟性があるのも魅力です。入社後は、先輩社員が親身になって指導してくれるため、安心して仕事を覚えられる雰囲気の会社です。
空港の仕事への道のりは、一本道ではなかったけれど、その遠回りは決して無駄ではありませんでした。お客様に声をかける力、相手の気持ちを汲み取る力、チームで一つのゴールに向かう力、後輩を育てる力。そして、働く仲間の声に耳を傾ける力。すべてが、今の旅客サービスの仕事につながっています。
「好き」なことを、「好き」なまま大切にしてほしいです。そうすると、遠回りでも道は開けていきます。あなたの「好き」も、いつか誰かの旅を支える力になるかもしれません。



(2026年6月取材)
(文:勝谷尚子、写真:小林哲朗)
人物インタビューを中心に、仕事や活動の背景にある思いを丁寧にすくい上げ、記事にまとめています。肩書きや仕事内容だけではなく、その人らしさが読者に伝わることを大切にしています。将来の夢は、みんながホクホク幸せになる焼き芋屋の開業です。
工場風景、市井の猫のいる風景、路地、廃墟、巨大建物など身近な異世界をテーマに撮影。
日本各地で講演や写真教室、撮影を行っている。
書籍は「ねこやん」「巨大工場探訪ガイド」など計11冊。
ニコンカレッジ講師。あまがさき文化観光アドバイザー。
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