ジェットスター・ジャパン株式会社
運航本部 運航企画室 企画業務部
運航本部アドミニストレーター
山本さん

成田空港を拠点とするLCC(格安航空会社)、ジェットスター・ジャパン株式会社の山本さんは、運航乗務員(パイロット)を支えるアドミニストレーターです。2025年1月に入社して1年が過ぎたばかり。前職はアフリカ・セネガル※1の在外公館派遣員でした。
在外公館に総務会計業務、出張支援をする人を派遣する一般社団法人 国際交流サービス協会※2を通じて、新卒で海外勤務を経験。約2年間、外交官をサポートする大使館勤務を経て、日本国内での就業経験がまったくないまま航空業界に飛び込んだ異色のキャリアです。山本さんにパイロットを支える仕事のあれこれと異業種からのキャリアチェンジについてうかがいました。
--- アフリカから帰国後、なぜ航空業界を目指されたのですか?
2024年3月にアフリカ勤務から帰国し、これまでの経験を生かせる仕事を探しました。前職では会計補佐、他機関との調整、ホテルや航空券の手配などを行っていました。その中で、セネガルにある空港や航空会社との交渉を担う機会もありました。退職後、日本で仕事を探すうちに、「空港や航空会社ってどんな仕事をしているのかな」と興味が芽生えました。そんな折、ジェットスター・ジャパンが求人を出していることを知り、自身の調整スキルを生かせる絶好の機会だと確信して応募し、ご縁をいただくことができました。

--- 航空業界は初めてですね。不安はありませんでしたか。
正直、不安もありましたが、むしろ興味の方が勝っていました。新卒でそのままアフリカへ渡ってしまったので、日本の会社組織で働くこと自体が初めてだったんです。
でも不安以上に「なんとかなるだろう」という気持ちの方が強かったですね。イスラム圏には「インシャラー(もし神が望むならば)」という言葉があるのですが、まさにその感覚に近かったかもしれません(笑)。
選んだ決め手は会社の知名度やブランド力です。家族に転職を報告した時も「おめでとう」と言ってもらえました。ただ、それらとは別に、ジェットスター・ジャパンという会社には「オレンジの情熱を持った人たちがいる」という雰囲気を感じたことも大きかったです。
--- 「オレンジの情熱」というのは?
赤や青の大手(JALやANA)とは違う、オレンジ(ジェットスターグループのコーポレートカラー)の情熱を持った人たちが集まっている会社、ということです。設立15年目ということもあり多様なバックグラウンドを持った転職者が多く、いろいろな視点や経験が集まっているのがジェットスター・ジャパンの良さだと感じています。

--- 今の仕事を教えてください。
運航乗務員であるパイロットの「運航以外のすべて」をサポートする仕事です。担当するパイロットは200人以上いて、私を含む3人のチームで対応しています。
具体的には、制服の管理・手配、経費精算の確認・承認、そして外国籍パイロットの国内社宅の選定・不動産会社との交渉まで、本当に幅広いです。さらに、パイロットが知るべき重要事項をまとめた資料(安全情報や健康管理に関するトピックなど)の編集・配信も担当しています。「なんでもかんでも降ってくる」という感覚ですね(笑)。
--- パイロットのサポートですが、苦労する点はありますか?
パイロットはフライトに関しては、当然プロ中のプロであり、専門職です。でも、中には経費精算のような事務的なものは苦手な方もおられます。「これこれの理由で今回の経費は認められませんでした」と伝えるのですが、「なぜダメなんですか」と返ってくることも多々あるため、理由を説明し理解を得ています。
他の会社でもあるみたいですが、メールで丁寧に説明しても、なかなか納得していただけなかったり、一度、上長がダメだと判断した内容でも「担当部署に言えば通るかも」とこちらにトライされることもあります(苦笑)。そうした時は意見をいったん受け止めて、「確認してご報告します」と預かった上で、改めて対応しています。忍耐力と我慢強さが求められます。

--- なるほど、真正面からぶつからずにワンクッション置くわけですね。
ええ。ただ、そこに熱量を持ちすぎないことが大切です。熱くなりすぎると反動が来たときにきついので、そういったイレギュラーに慣れるというか……。航空業界でよく使われる「イレギュラー」という言葉が、この仕事にもよく当てはまります(笑)。
最近だと、例えば「滞在用にマンスリーアパートを借りました。認められますか」という事後相談もありました。想定外の申請がくることもあるので、お金に関する知識や危機管理意識はかなり鍛えられる仕事だと感じています。

--- 大使館での仕事はどんなものでしたか。
主に会計補佐やセネガルの企業との折衝です。外務副大臣のセネガル来訪に向けた準備や、関係機関との調整を2度経験しました。大使館では「ロジ」と呼んでいましたが、ロジスティクスの略語ですね。何が必要で、誰に何を確認すればいいかを自分で考えつつ、関係部署と調整して動く必要があります。ホテルやレンタカーの手配を担当したほか、現地の空港や航空会社との対外的な折衝も経験しました。
--- 前職での経験が今に生きていると感じる場面はありますか。
はい。一番は、やっぱり他の部門の方と調整する時の事前の下調べや、根回しの経験ですね。ジェットスター・ジャパンに入社した後も、その業務に何が必要なのかを事前にイメージして、他の部門や上司にも確認しながら進めることで円滑に業務を遂行できています。こうした場面で根回しや折衝、交渉の経験が生きていますね。
直近で特に大きな手応えを感じたのが、2026年3月17日に行われた中部国際空港(セントレア)のターミナル移転です。ジェットスター・ジャパンが第2ターミナルから第1ターミナルに移ることに伴って、パイロットの動線も大きく変わることになり、私はその調整業務に携わりました。※3

--- 外交の現場では人の動線や段取り・手配などの関連資料を作成するそうですね。その経験が今回のターミナル移転でパイロットの動線を整理する作業につながったのですね。
まさにそうです。ターミナル移転では、機体に向かうルート、アルコール検査を行う場所、機材変更が起きたときの移動経路など、すべて変わりました。私は成田にいたので、セントレアの状況を一人では到底把握しきれませんでしたが、ここでロジを担った感覚が役に立ちました。何が必要かを洗い出して、関係部門に片っ端から確認しました。名古屋在住のメンバーに聞いたり、現地写真を送ってもらったり。グーグルマップも駆使して動線を把握しました。
最終的にはマニュアル化してパイロット全員で共有するところまで仕上げました。これができたのは、「使えるものはとことん使う」「わからなければとことん聞く」という前職で鍛えられた経験があったからです。また、ジェットスターグループの行動指針に「ワンチーム」があります。部門の垣根を超えて目的を共有し、一緒に動くというものですが、ターミナル移転ではこのグループ文化にも大きく助けられました。
--- まさにロジの経験が生きました。追い込まれても動じないのはさすがです。
シンガポールを拠点にしたジェットスターグループのジェットスター・アジア航空が運航を終了した際に、パイロットをジェットスター・ジャパンで採用することになり、成田近辺で社宅を用意してほしいと依頼されました。ところが外国籍の方の入居を受け入れてもらえない大家さんが多くて、市内ではなかなか物件が見つからない。
正直「まずい」と焦りましたが、かたっぱしから不動産会社に連絡して、最終的に県内で物件を確保できました。どういう手順で進めればいいかもわからない中で、関連部署に「これで問題ないですか」と確認しながら一歩一歩進めました。
--- パイロットのサポートで自分も「航空に関わっている」という実感はありますか。
はい。私の仕事はフライトとは直接関係がないように見えますが、パイロットが運航に集中できる環境を作ることが目的です。例えばターミナル移転の件で言えば、動線を間違えて案内してしまったら、出発が遅れてお客様に迷惑をかけるだけでなく、安全にも関わります。バックオフィスにいるからこそ、それを常に意識していなければいけないと思っています。
直接フライトに携わるわけではないけれど、パイロット、キャビンクルー、グランドスタッフ、エンジニア、運航管理とさまざまな職種の方と関わりながら仕事をしていること自体が、この仕事の面白さだと思います。

--- 会社の推しポイントは?
ジェットスター・ジャパンではフレックスタイム制が導入されていて、コアタイムの10時から16時以外は、各自が自分のペースで出退勤を決められるんです。私は朝が苦手なので(笑)、通勤距離が近いことも生かしてやや遅めに出社するなど、自分のペースで無理なく働けるこの制度は本当にありがたいですね。
福利厚生の面では、職場に「オフィスおかん」※4が2026年2月から導入されました。オフィスに備えるお惣菜です。フードコートやコンビニが混んでいたり遠かったりする問題を組合の働きかけで解決しました。

--- ジェットスター・ジャパンは2026年10月に新ブランドを発表(予定)して、2027年6月にブランド移行を完了予定です。社内は今、どんな雰囲気ですか?
はい、もう楽しみですね。さらにいい会社になろうと前向きです。その新しい創業に携われることをプラスに感じています。
--- 最後に航空業界を目指す方へメッセージをお願いします。
「航空業界で働きたい」という気持ちだけで動くのではなく、「今の自分の経験がこの業界のどこに生かせるか」を考えてみてほしいです。私自身も異業種からのスタートでしたが、セネガルでロジの仕切りをした経験が今の仕事に重なる部分がありました。
自己分析をしっかりして、その会社のことを調べれば、自分の強みも見えてきて近づける道が見つかると思います。業界未経験の私がここにいます。ぜひ調べてみてください。会社のウェブページでも、業界のニュース記事でもいい。まずは知ることから始めればいいと思います。



※1 セネガル共和国
セネガルの旧宗主国はフランスで、公用語はフランス語。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senegal/data.html#01
※2 一般社団法人 国際交流サービス協会(IHCSA)
外務省と連携して在外公館(大使館・領事館)に人材を派遣する一般社団法人。在外公館派遣員として会計・総務業務や出張者を支援する人材を選抜・派遣する。専門調査員、技術派遣員、公邸料理人の派遣支援も手がける。
https://www.ihcsa.or.jp/
※3 中部国際空港第1ターミナルに移転
https://www.centrair.jp/news/1329655_1781.html
※4 オフィスおかん 株式会社OKANが提供する「置き型社食」サービス。管理栄養士が監修したお惣菜入り専用冷蔵庫をオフィスに設置し、社員は1品100円(税込)から利用できる。食堂の設置が難しい職場向けの簡易社食として導入が広がっている。航空業界では株式会社AIRDOが導入。ジェットスター・ジャパンは労組が要求し、実現した。 https://office.okan.jp/
(2026年4月取材)
(文:小島昇、写真:大橋政昭)
フリーランス記者・編集者。東洋経済新報社の会社四季報編集部記者として上場企業を取材。インプレスの「Web担当者Forum」でサイト担当者向けニュースを、角川アスキー総合研究所の「ASCII STARTUP」でスタートアップ界隈の話題を執筆。毎日新聞社で経済部記者として電機メーカー、情報通信、重工業、化学工業、化粧品・日用品業界のほか、東京証券取引所、総務省、経済産業省、国土交通省など霞ヶ関を取材。ニュースサイトの編集・編成業務10年を経て2019年9月退社し独立。
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千葉県習志野市副業カメラマンからスタートして、2019年に独立。スクールフォト、キッズ・ファミリーフォトを多く手掛ける子供好きカメラマン。その他各種スポーツイベント、プロフィール、ビジネスサイト向け等、幅広く活動中。