株式会社ソラシドエア
五十嵐那海さん
2018年にソラシドエアに総合職で入社した五十嵐那海(いがらし・なみ)さん。現在は空港でお客さまの搭乗手続きなどをおこなうグランドスタッフとしてカウンターの責任者などを務め、現場の頼れるリーダーとして活躍しています。
大学生の頃からソラシドエアに入りたいと願い、憧れの仕事に就いたものの、イレギュラーの多い現場で立ち直れないようなミスも経験しました。それでも「辞めたいと思ったことは一度もない」と語り、入社6年目となる今も仕事の奥深さにやりがいを感じているという五十嵐さん。
この仕事を目指し始めた頃から、これまでの歩みについて伺いました。
--- 五十嵐さんは現在グランドスタッフとして働かれていますが、飛行機や空港は昔からお好きだったのでしょうか。
はい、父が旅行好きだったので子どもの頃から空港に行く機会が多くて、羽田や成田など大きい空港のきらきらした雰囲気に憧れがありました。飛行機に乗ることも機内食を食べることも、全部が好きでしたね。
--- よく家族旅行をされていたんですね。
夏休みや年末年始のお休みなど、年に一度は旅行をしていました。海外旅行の機会も多く、ヨーロッパなどの遠いところにも連れて行ってもらいました。ただ、幼い頃なので記憶はないです(笑)。実家が福島なので、海外に行くときは、まず新幹線で成田空港まで行っていたのですが、空港に向かうまでの時間も“特別なイベント”という感じですごく楽しかったことは覚えています。
--- 「空港で働きたい」と思い始めたのはいつ頃だったのでしょう?
うーん……最初のきっかけは、高校生のときに地元の本屋でたまたま手に取った航空系雑誌の「月刊エアステージ(※)」をなんとなく読み始めたことでしょうか。誌面で紹介されているグランドスタッフのお仕事に興味を持って、働いてみたいなと思うようになったと記憶しています。
※月刊エアステージ:イカロス出版が発行する、CA、グランドスタッフになりたい人のための就職情報誌
--- 高校生から「エアステージ」を!
どうして手に取ったのかはあまり覚えていないんです。田舎で娯楽が少なかったので本屋にはよく行っていたのと、両親も姉も旅行や飛行機が好きだったので、なんとなく興味を持って……という感じだったんだと思います。はっきりとグランドスタッフを目指そうと思ったのは、大学1年生のときですね。
--- なにかきっかけがあったのでしょうか。
私、「グランドスタッフになりたい」というよりは「ソラシドエアで働きたい」と思ったんです。最初に「エアステージ」で鮮やかなピスタチオグリーンのコーポレートカラーに惹かれ、いろいろ調べていく中で、ブランドの理念やロゴマークの由来に感動して、ここに入社したいなと。CAのお仕事にも興味はあったのですが、地域の方との繋がりを大切にし、お客さま一人ひとりとの距離の近いソラシドエアのグランドスタッフの仕事に魅力を感じました。
--- 大学1年生から夢見た会社に入社が決まったときは、どんなお気持ちでしたか。
自宅で内定の連絡を受け、すぐに母に伝えて抱き合って喜びました!ずっと憧れていた会社に入れることは本当に嬉しかったですし、家族も喜んでくれました。
--- 今は、日々どんなお仕事をしているのでしょうか。
出発便や到着便のお客さまのご案内をはじめ、さまざまな業務に携わっています。
大まかな一日の流れとしては、出勤したらお客さまの情報や便の情報について全体ブリーフィングを受け、ゲートで到着便のお客さまをお迎え。その後チェックインカウンターで出発便のご案内をし、1時間の休憩を挟んでまた便の対応に戻る……という感じです。
私は今入社6年目なのですが、年次が上がるごとに取れる社内資格が増え、できることの幅も広がります。最初は出発便の改札業務から始まり、チェックインカウンターでの端末業務(搭乗手続きなど)、搭乗ゲートの責任者、旅客係員全員を統括する責任者、とステップアップしていきます。
--- 勤務シフトはどのようになっているのでしょう?
早番と遅番のシフトがあり、私の場合は「早番を2日勤務、遅番を2日勤務、休み2日」の順番です。早番にも種類があるのですが、一番早いときは5時出社です。3時半くらいに起きて、会社手配のタクシーで出社します。
--- 早い! 入社したばかりの頃は慣れるのが大変だったのではないでしょうか。
早起きが苦手だったので、慣れるまでは寝坊しないかいつも緊張していましたね……。
--- 入社当時のこともぜひお聞きできればと思います。初めて現場に立ったときのことは覚えていますか?
グランドスタッフは、入社後まずは航空会社の規定などを学ぶための座学研修を受け、その後配属され、OJTとして先輩に付いて学びます。何便か実務をこなし、テストで合格をしたら独り立ちなのですが、初めてゲートに一人で立ったときは本当に不安でした。緊張して自分の仕事で精一杯だったので、お客さまとも全然うまくお話できなくて。
--- 新人時代のエピソードで、印象的だったことはありますか。
覚えているものだと、どうしてもミスのエピソードになってしまうのですが……。カウンターで航空券の払い戻しをする際、会社控えとお客さま用明細書を逆にお渡ししてしまい、お客さまにご迷惑をおかけしてしまったりとか……。そういったささいなことでも影響は大きいので、当時はすごく落ち込んだ記憶があります。
--- 今振り返って、一番「やってしまった!」と青ざめたことは?
1年目か2年目だったのですが、カウンターで手荷物のサイズの測り間違いをしてしまって。楽器を持ち込み希望のお客さまに「機内持ち込みOKです」とご案内したのですが、いざ搭乗口に行ったら持ち込めないサイズだったんです。無線で全体に連絡が入った瞬間「私のミスだ!」とすぐに気づいて。
--- どのように対処をされたのでしょうか。
その便では、座席に固定し運航することになったのですが、その判断までにかなり時間を要し、出発も少し遅れてしまいました。安全の次に「定時性」が大事な仕事なので、申し訳ない気持ちで涙をぼろぼろ流しながら楽器を固定する器具を飛行機に持って行った記憶があります。お客さまは「あなたのせいじゃないから大丈夫だよ」と慰めてくださったのですが……かなり落ち込みました。
--- 自分のミスではなくても、天気や機材の関係でトラブルが起きるなど臨機応変な対応が必要になることも多そうです。
天気に関しては、もうどうしようもないですよね。特にソラシドエアが就航している沖縄は台風が多く、出発した飛行機が目的地に着陸できずに出発空港に戻ってくることや欠航になることも多いです。一便戻ってくるだけでも、地上交通やホテルの空室情報を調べたりと、やることがたくさんあるので、無線で「戻ってきます」と一報が入ったときは緊張が走ります。
--- あれだけ多くの人、便が行き交う場所だからこそ、きっとイレギュラーも多いですよね。
機材不具合で欠航になったり、空港全体のシステムがダウンして端末が使えなくなるなど、イレギュラーはつきものですね。
プライベートで飛行機に乗るときも、保安検査場にグランドスタッフが立っていると「まだ保安検査場を通過してない方を探してるんだな」って思ったり、トラブルが起きていそうな雰囲気をつい察知してしまって「手伝ってあげたい……」と、もどかしい気持ちになります。
--- ここまでミスや大変なことのお話ばかり聞いてしまいましたが、「この仕事に就いてよかった!」と感じられたこともあると思います。お仕事の中で嬉しかったエピソードや、やりがいを感じる瞬間についてもぜひ教えてください。
「お客さまと一番話せるからカウンターが好き」という人もいますが、私はゲートが一番好きです。搭乗までの一番最後の行程である出発に関わるところなので、責任感もやりがいもあります。定刻通りにドアを閉められると「やった!」と思います。
それから、飛行機がブロックアウト(車輪止めを外して出発すること)したとき、ゲートからお客さまに手を振るんですが、お客さまが窓から手を振り返してくれるたびに嬉しい気持ちになります。
--- お客さまとのコミュニケーションは、グランドスタッフのお仕事の醍醐味のひとつだと思います。お客さまとのエピソードで忘れられないものはありますか。
カウンター責任者として入った日、車椅子をご利用されるお客さまが保安検査場締切時刻間際にいらしたんです。時間ぎりぎりだったので、かなり急いで搭乗口まで向かっていただくか、ご搭乗をお断りする判断になることもある状況でした。ですが、私は急がずに搭乗口までご案内する判断をしました。というのも、お連れさまが2時間前から空港にいらしていて、「もうすぐ同行者が来るので待っていてほしい」とずっとお伺いしていたからです。
結局、便は遅れてしまったので、判断ミスだったなと反省したのですが、後日、先に空港に着いていたお客さまからお手紙が届いて。「先日はありがとうございました。母親の最後の里帰りだったかもしれないので、配慮いただけて嬉しかったです」と。
--- なんて嬉しいお手紙!
私たちにとってはたくさんある中の一便でも、お客さまにとってはとても大事な一便かもしれません。お客さまそれぞれの事情に配慮してコミュニケーションをとることを大事にしているつもりなので、そうやってお褒めの言葉をいただけたのはとても嬉しかったです。
--- 「グランドスタッフの仕事がしたい」ではなく、「ソラシドエアで働きたい」という気持ちが強かったというお話がありました。実際に働いてみて、ソラシドエアのどんなところに魅力を感じていますか。
学生の頃から、ソラシドエアには地域とのつながりを大事にしている印象を持っていて、実際に働いてみて、やはりそこが魅力だなと思います。イベントで九州に行って地域の方とお話しすることもありますし、就航地のPRのためにどんなことができるかを地域の方と一緒に考えたりもします。
お客さまとの距離や係員同士の距離も近く風通しがいいので、この会社に入ってよかったなといつも思っています。
会社のイベントで宮崎県を訪れたとき(五十嵐さん提供)
--- これからグランドスタッフを目指す方に伝えたいことはありますか?
グランドスタッフは、先ほどお話ししたようにイレギュラーが多い仕事で、かつシフト勤務で体力的にきつい面もあります。でも、ただカウンターに立ってご案内するだけの仕事ではなく、「一便の裏でこんなに多くのことが動いていたんだ!」と驚くほど多様な業務があって、奥深くやりがいのある仕事でもあります。ステップアップすることで関わることのできる仕事の幅も広がりますし、搭乗するお客さまも機材の状況も一便一便違うので、毎日新鮮な気持ちで仕事に向き合えると思います。
--- 最後に、五十嵐さんがこの先やってみたいことを教えてください。
現場での知識や経験を活かして、いずれは人事のお仕事に携わってみたいなと思います。私が入社した年に新卒採用担当だった人事の方が、会社の魅力を伝えるのがとても上手な方で、その人に憧れたので。現場のお仕事もすごく魅力的ですが、いつか新しい環境でのチャレンジもしてみたいです。
(2023年5月取材)
(文:鼈宮谷千尋、写真:大橋政昭)