JALグランドサービス大阪 澤田さん
旅の玄関先から失礼します、ライターのおかんと申します。
私はいま大阪国際空港(伊丹空港)に来ております。空港といえば、さまざまな人がさまざまな場所に移動していく人類の一大交差点。普段は飛行機ではるか彼方にビューンしますが、今回は空港内に要注目!
伊丹空港で働く職員さんのオシゴトを知るためにやってきたのです。おりしもわたしは地元が伊丹市、旅行だけではなく展望デッキで飛行機を眺めたりして超活用しているので、ここは大阪国際空港ではなく伊丹空港と呼ばせていただきます。地元愛!
お話を伺うのは、JALグランドサービス大阪の旅客サービス課で働く澤田さん。空港で働く人はもれなく笑顔がキレイだと思ってたけど、澤田さんもやっぱり笑った顔がステキ〜!
--- 澤田さんは普段どんなお仕事をされてるんですか?
わたしが所属している『旅客サービス課』は、おもに到着ロビー周辺で、お客さまの荷物を返却したり、出発・到着時の車いすの移動補助などをメインに仕事をしています。
--- 澤田さんは到着ロビーが主なお仕事場ってことですか。出発の手続きなんかはしないんですね。
そうですね。ご存知ない方も多いと思うんですが、ここ伊丹空港では、出発を担当する人と到着を担当する人は、それぞれ所属する会社が異なるんですよ。
--- ええ〜!?そうなんですか?
はい、どちらもJALのグループ会社なんですが、『空港旅客会社』と『グランドハンドリング会社』に分かれています。
--- 「グランドハンドリング会社」……?
空港旅客会社がおこなう出発の仕事は、たとえばチケットの発券や搭乗受付のように、接客応対がメインになってきます。グランドハンドリング会社は、空港での荷物の輸送時間を短くして、スムーズに飛行機が行き交うお手伝いをすることなどが仕事です。
ここで旅先へ運ぶ荷物をコンテナに詰めて飛行機に載せる準備をしたり、やってきた荷物をすばやく到着ロビーのベルトコンベアーに流したりするのも、旅客サービス課の大切な業務ですね。
--- めちゃくちゃ裏方の仕事!そうか、のほほんと荷物を待ってたけど、そこで働く人がいるからこそきちんと手元に荷物が届くんだ……。
バックヤードは半分外のようなものなので、夏場や冬場の作業は大変です。けっこう体力が必要な仕事なんですが、お客さまのことを考えると、やっぱりやりがいがあります。
--- 澤田さんたちが見えないところで働いてくれてるおかげで、我々は快適な空の旅ができるんですね!いつもありがとうございます!
--- 荷物運搬のような裏方作業から、到着ロビーでお客さまと顔を合わせての業務まで、いろいろあると思うんですが、澤田さんは日々の業務で好きなことはなんですか?
やっぱり到着ロビーでお客さまと関わるタイミングが好きですね。じつは就職活動時には、接客業務が中心の空港旅客会社での就職を希望してまして。
--- そちらには行かなかったんですか?
そっちは落ちました。
--- あぶぶ……なんかすみません……。
でも以前『出向』というかたちで、3年ほど空港旅客会社で働いていたことがあったんです。期間限定ではあったんですが、夢だった窓口業務に携われてよかったですね。
--- なるほど、もともとの夢もあって澤田さんは接客がお好きなんですね。
はい。だからお客さまと触れ合える時間はより大切にしています。車いすのお客さまのサポートなんかは、とくに。
--- 車いすのお客さま?
年配の方だと、車いすを使用されるお客さまも多いんです。お年をめされた方は、飛行機に乗るのって一大事なんですよね。
--- 昔はそんなに気軽に飛行機に乗れなかったもんなあ。
一生で一度……のつもりで搭乗されたお客さまの車いすを引いてお見送りしている時、『とってもよくしてもらったから、また飛行機に乗ってみたい』とおっしゃっていただいて、本当に感動しました。
--- うーん、いい話!飛行機がお客さまの世界を広げた瞬間ですね。
あとは到着ロビーのベルトコンベアーに流れてきたお客さまの荷物を取るお手伝いをしたり……。お土産でいっぱいになった手荷物は、移動で疲れた身体ではパッととるのが難しい場合もあるので。
--- 重くないんですか?
もちろん重さはありますけど、毎日の業務で慣れてますから。大きなバックパックなんかもお任せください!
--- 職場の雰囲気はどんな感じですか?
風通しはいいですね。体力を使う場面も多いので、けっこう『部活』に近いかも。
--- 澤田さんは入社からずっと伊丹空港の旅客サービス課で?
そうですね。もともと飛行機が好きで、高校を卒業して航空系の専門学校に進学しました。2年学校で学んで、就職といった感じです。
--- 入ったばかりのときは大変でした?
入社当初はよく怒られていましたね。就職と同時に空港の近くで一人暮らしをはじめたのもあって、大きな環境の変化についていけなくて。
--- どうなったんですか。
怒られた日は、空港内で豚まんを買って、ほおばりながら展望デッキで泣いてました。
--- ほほえましくて笑っちゃう。
--- 空港で働くには、どんな人が向いているんですか?
立っている時間や動いている時間が長いので、体力があるといいですね。よく食べ、よく寝て、元気で明るい人。接客の面では、お客さまは十人十色なので、マニュアルにとらわれず臨機応変に対応できる性格がいいかな。
そう話す澤田さんの横顔、キレイなだけじゃなく、肉体的にも精神的にもパリっとした強さが垣間見えました。すごくお仕事に誇りを持ってやっているんだなぁ……。
上品な立ち振る舞いだけが目立ちがちな旅客サービスの仕事ですが、遅れなく出発するためにすばやく荷物を運ぶ、快適に移動できるようサポートを万全にする……、見えない部分にこそ問われる「仕事の真価」を教えてもらったような気がします。
全国各地に飛び立っていく飛行機たち。その足下では、今日も澤田さんたちがひっそりと、でもしっかり我々の旅を守ってくれているのでした。
(文:平山おかん、写真:三浦大)
京都の編集プロダクション、合同会社バンクトゥの編集兼ライター。「おかん」の通称はほとばしるオバちゃん感から。伊丹空港32L滑走路の南側、千里川河川敷で視界スレッスレに着陸する飛行機を眺めながらビールを飲んでボーッとするのが趣味のひとつです。