空港の裏方お仕事図鑑

presented by JFAIUロゴ 航空連合

“ 好きを仕事に ” ではないのに、気付けば天職。「まずやってみる」精神で仕事を楽しむ

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課<br />
                    キャプテン 佐藤和香子さん

今回取材したのは、沖縄の観光リゾートホテルのひとつ『ホテル日航アリビラ』で、マリンアクティビティスタッフとして働く佐藤和香子さんです。
「マリンアクティビティ」とは、海で楽しむアクティビティのこと。アリビラではマリンスポーツや、フィールドスポーツ(テニス、パターゴルフなど)、多岐にわたるメニューがあります。佐藤さんはホテルでの「遊び」全般の受付やご案内、ガイドなどをしています。

こんがり焼けた肌と笑顔が素敵な佐藤さん。「まさにマリンレジャーが大好き!」といった雰囲気ですが、実はこの業界にはまったくの未経験・異業種で入ったのだそう。
今や「仕事とプライベートの垣根がないほど毎日が充実しています」と話す佐藤さんの、現在のお仕事観に迫ります。

大学卒業後は、営業や居酒屋の経営を経てマリンアクティビティのお仕事へ

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

--- これまでどんなお仕事をされていたんでしょうか。

大学を卒業した後は、住宅関係の商社に入社して2年ほど営業をしていました。その後、縁あって飲食の仕事に就いていたのですが、1年後にはやめて、自分で小さな居酒屋を始めたんです。

お店は東京で7年ほど続いたのですが、その間、休みのたびに沖縄旅行に行っていたんですね。毎年沖縄にいくたびに、すっかりその魅力に取り憑かれてしまって。
「もし移住するなら動けるうちがいいかな」と思っていたとき、私の居酒屋を継ぎたいという方が現れたんです。そのとき、「今しかない!」と強く感じて、思い切って店は譲渡し、沖縄移住に踏み切ることにしたんです。

--- これまでの職種はさまざまですが、お仕事を選ぶ際のこだわりはありますか?

実はあまりないんです(苦笑)。私は若い頃から「こうなりたい」というのがなくて。ただ、漠然と「生活」に近い仕事がいいなとは思ってきました。自分の生活とかけ離れすぎていると、働く仕事のイメージが湧かないので。

--- 沖縄移住後、どのように現在の仕事に辿り着いたのでしょうか。

移住したばかりの頃は、ふらふらと遊んでいました(笑)。
ある日、なにかいい仕事ないかな、くらいの気持ちで求人誌を見ていたところ、たまたま『ホテル日航アリビラ』のプール監視員のアルバイト募集という求人が目に留まったんです。夏休み期間限定の短期アルバイトでしたが、せっかく沖縄に来たんだし、夏だし、それっぽい仕事もいいかなと思い、応募してみました。

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

---現在は正社員とのことですが、そこに至るまではどういう流れでしたか?

短期アルバイトが終わる頃、長期のパートとして契約しませんかというお話をいただいたんです。プールの監視員という仕事がとても楽しかったので、お話を受けることにしました。
それから少しずつ、アリビラのマリンアクティビティの仕事も覚えていきました。正社員になったのは今年(2024年)の4月で、それまではパート契約だったんですよ。

---最近なんですね!しかも、すでに「キャプテン」という役職とのことですが、どのような立ち位置でしょうか。

一般企業でいうところの主任のようなポジションですね。現場の仕事をしつつ、全体の責任者としての役割も担っている感じです。

--- 正社員になってすぐに役職がついたんですか?

はい。その理由は、パート契約の頃からお金を扱う仕事を任されていたからかもしれません。弊社のマリンアクティビティ課は、わりと海が好きな方や、特定のアクティビティを担当したくて入って来る方が多いのですが、私は営業や経営の経験があったので、役職を任せていただけたのかもしれません。

「同じマリンでも、もし別の職場だったら、ここまで続かなかったかもしれない」

--- 佐藤さんは未経験からのスタートともいえますが、入社する前と入った後、マリンアクティビティの仕事の印象は変わりましたか?

はい。正直なところ、マリンレジャー=金髪でロン毛の若者が働いているイメージがあったんです。だけどアリビラのマリンアクティビティスタッフはみんな真面目。そしてみんな共通してアリビラが大好きなんです。一度辞めてまた戻ってくるスタッフも多いんですよ。

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

--- マリンアクティビティスタッフの具体的なお仕事内容を教えてください。

仕事はその日のシフトによって毎日変わります。アクティビティのメニューが色々あるので、その日の予約によって、水上バイクの操船を担当したり、シュノーケルのガイドをしたり。船のクルーを担当することもあります。
1日中、受付や会計業務などの担当することもありますし、パラソルなどのレンタル品の貸し出しや、プールでの監視員などをすることもあります。
今日の午前中は、フィールドメニューの、テニス・パターゴルフ・レンタサイクルやトゥクトゥクなどの受付をやっていました。

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

--- かなり多岐にわたりますね。ホテル館内すべての“遊び”を担当されているのでしょうか?

そうですね。弊社のマリンレジャー課は、ホテル内でできる“遊び”をすべて担っているんです。
そのため、マリンやビーチ、フィールド(テニスやゴルフなどの陸上アクティビティ)、室内プールのほか、クラフト教室を行うエデュテイメントルームで、釣りをレクチャーしたり、生き物散策を担当することもあります。

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

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キャプテン 佐藤和香子さん

--- アリビラは、マリンメニューがとても豊富ですよね。サップやウエイクボードスクールもあるようですが、佐藤さんは全メニューを担当できるんですか?

はい。クラフト体験以外は、メニューにあるものは全てできるようになりました。私自身、はじめて経験するアクティビティが多かったんですが、なんとかできるようになりましたね。

--- すごい!未経験のものでも苦手意識を持たずに挑戦できるものでしょうか。

そうですね。私は何をするにも「まずはやってみること」を大事にしているんです。「わからないからこそ、やってみてから考えよう」って。これ本当に楽しいのかな?って一瞬思うこともあるんですけど、そう思ったら絶対に楽しくないじゃないですか。だからあまり最初から、否定的な気持ちで入らないようにしています。

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

--- 他にもお仕事で心掛けていることはありますか?

やはり、ホテルという施設ですので、言葉遣いには気を配っています。とはいえ固くなりすぎないよう、その塩梅には気を付けています。
お客さまが、気軽にスタッフに声をかけられるような雰囲気作りも心掛けていますね。

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

--- ホテルに入っているアクティビティならではの特徴があれば教えてください。

ホテルですので、大半のお客さまが宿泊されます。そのため、その日限りだけではなく、「昨日できなかったので、今日もやってみたい」と言う声にお答えすることができます。

たとえば弊社ではサップ用のボードが2種類あるんです。通常のサップボードと透明のクリアサップボードなんですが、クリアの方は海が透けて見えるので人気なんです。
ただ、通常のサップよりも操作が難しいので、1日目に通常のサップボードで練習していただいて、できそうだったら2日目にクリアに挑戦してみませんかといったご提案ができるんです。
お客さまが数日滞在してくださっているからこそできるコミュニケーションなので、そこは面白いですね。

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

--- 他にも、このお仕事の面白みとか好きなところってありますか?

マリンアクティビティを初めてというお客さまがとても多いので、お客さまの成功を目指して一緒に頑張るっていうのは楽しいです。
中には、今回のご旅行が「はじめての海なんです」というお子さんもいらっしゃるんですよ。そうすると、最初はとにかく海が「怖い」とか、シュノーケリングをやってみても「海の水がしょっぱい」と嫌がられることもあるんです。
でも、一緒に頑張ってみようと励ましながらトライしてもらって、最後には「楽しかった」「またやりたい」と言っていただける。そういう時、嬉しいなって思います。

--- 逆にこのお仕事の苦手なところや、今でも難しいなと感じるところはありますか?

今のお話と同じになりますが、お子さんによってはどう頑張ってもダメってことがあるし、もう辞めるってなっちゃうこともあって。その時は残念ですし、力不足を感じて申し訳ないなと思います。
ウエイクボードのスクールは難易度も高いので、お客さまを上手くボードの上に立たせきれない時に難しさを感じます。ウエイクボードにおいては、お客さまの力不足ではなく、「ボードの上に立つことができるのはインストラクターの腕次第」と言われているので。

--- そういう時、どのようにリカバリーするんでしょうか。

シュノーケリングのお子さんの場合、メニュー自体はできなくても、せめてその時間は楽しく過ごせることを大切に考えて工夫しています。海には入れなかったとしても「じゃあ、お魚さんに餌あげてみる?」といったご提案をして、海の体験を楽しいものにしてもらう。ウエイクボードの場合は、時間内に立つことができなくてもまたいつか挑戦される日があるかもしれません。
その時のために、「もし次どこかで挑戦されるときは、こんな風に意識してみてくださいね」と伝えてから終わるようにしています。絶対に立てないということはないし、もうウエイクボードは絶対やりたくないって思われてしまうのが一番寂しいことなので。

--- このお仕事をやっていて、良かったなと思う瞬間はありますか?

大きなエピソードではないんですが、「サンセットセーリング」というアクティビティプランがあって、ヨットから見る“読谷(よみたん)の夕陽”がとても綺麗なんです。その景色を見るたびに、この仕事をやってて良かったなぁって思いますね。

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

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(水上バイクのメンテナンスもマリンレジャー課のお仕事)

プライベートの日も気づけば会社に。「初めて公私がいらなくなった仕事かも」

--- お仕事終わりはどのように過ごされているんですか?

最近はできていないんですけど、一時期は趣味のサーフィンをやっていました。
あとは、アクティビティの予約状況にもよりますが、「自分たちがやってみないとお客さまに楽しさを教えられないよね」という“名目”で、サップで海に出かけて行ってプライベートでも夕陽を見ています(笑)。

--- 贅沢ですね。佐藤さん、仕事を終えた後も海にいるんですね(笑)。

はい。海以外に趣味がないんです(笑)。今は海遊びが一番楽しいですね。

--- あまり公私が分かれていなくても平気なタイプですか?

実は、そうだったみたいなんですよ。

--- 最近気づかれたんですか?(笑)。

そうなんです。飲食店を経営していた時は完全に仕事とプライベートを分けたいと思っていたんです。だけど、今この生活をはじめてからは、仕事も遊びもプライベートも一緒でいいんだなって思うようになりました。

--- 天職...!お休みの日はどう過ごされていますか?

プライベートでやりたいことがあまりないので難しいですね。でも、シフトの関係で2連休をいただけたら、とりあえずニライビーチに遊びに来ちゃいます(笑)。アクティビティの予約状況に余裕があれば海に出ていますね。

--- もう本当に天職なんですね。素敵なお話をありがとうございました!

(2024年8月取材)

ホテル日航アリビラ マリンレジャー課
キャプテン 佐藤和香子さん

(文、写真:三好優実)

ライター:三好優実

沖縄のフリーライター、編集者。取材と執筆を通して、ひとりひとりの心が自由になるための記事を目指す。企業の公式サイトや新聞社にてコラム連載も執筆中。『香川あるある』著者。個人のnoteにて母親インタビューとワーママ日記を連載中。
note:https://note.com/yumi03/

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