株式会社OCS
新川育未さん
国際輸送事業を行う株式会社OCSでカスタマーサービスのお仕事をしている、入社8年目の新川育未(しんかわ いくみ)さん。明るくハキハキした、人懐っこい笑顔が印象的な女性です。
そんな彼女が物流業界を志したのは、学生時代に中国に留学したときの、ある出来事が理由だそう。
入社後に経験した中国研修や、天候に左右される航空貨物業界ならではの大変さ、チャレンジ精神を持つようになったきっかけなど、たっぷり語っていただきました!
--- 新川さんの業務について教えてください。
カスタマーサービスという部署に所属しています。コールセンターをイメージしていただければしっくりくると思いますが、お客さまからのお問い合わせに答える部署です。以前は私も電話を受けていましたが、今はカスタマーサービスの中の企画チームに所属していて、主に新人教育を担当しています。お客さまへの応対品質をいかに高めるかを考えるのが仕事です。
--- OCSに入社した理由を教えてください。
もともと海外に興味があって、大学時代は中国に1年間留学していました。OCSは航空貨物を通じて海外と関わることができますし、中国にも拠点があるところに惹かれました。
--- なぜ、留学先に中国を選んだのでしょうか?
中学2年生のとき、姉妹都市交流で1週間ほどオーストラリアに行ったんです。それがとても楽しくて、大学生になったら海外に留学したいと思うようになりました。留学先を中国にしたのは、身近に中国からの留学生が多く、影響を受けたから。言葉をあまり勉強しないまま行ってしまったので、最初は結構大変でした(笑)。
留学中、印象に残っている出来事があります。私が留学した2012年は中国で反日デモが起きたんですが、そんな社会情勢の中でも、実家からの荷物はちゃんと届いたんですね。そのとき、「荷物って、ものだけじゃなくて安心を届けてくれるんだな」と思いました。今思えば、それが物流に興味を持ったきっかけかもしれません。
--- それで、物流の会社に就職を?
そうですね。物流業界には海運や陸運もありますが、航空貨物の強みはなんといっても速さ。緊急性の高いものも多く取り扱っているので、人の役に立てることがたくさんあります。また、たとえばパンダの輸送など、国際交流にも一役買うことができるのが魅力でもありますね。
--- OCSに入って、よかったことを教えてください。
海外と関わる仕事がしたかったので、希望が叶って嬉しいです。貨物の状況の問い合わせのために海外のスタッフとやり取りをすることがありますし、研修で半年間、中国に行くこともできました。
--- 半年間も行くんですね!
はい。最初の3ヶ月は青島、次の1ヶ月は華南エリア、最後の2ヶ月は上海。ドライバーと同乗してお客さまのところを回って集荷したり、通関や営業を体験したり、一通りの業務をやらせてもらいました。中国のカスタマーサービスには日頃やり取りしていた方がたくさんいて、実際に会えて嬉しかったです。コミュニケーションは大変でしたけど、とてもいい思い出ですね。
--- やっぱり留学していたから中国語はペラペラなんですか?
日常会話はできるんですが、業務では専門用語を使うことが多いので、相手の言葉がわからないこともあります。そんなときは相手が漢字で書いてくれたり、ネットで調べてくれたりしてコミュニケーションをとっていました。
--- お仕事の大変なところを教えてください。
国際情勢や天候など、いろんな影響を受けてイレギュラーなことが起きる点でしょうか。
たとえば、台風や大雪のときは飛行機が飛びません。そういったときは、お客さまからの問い合わせが増えます。日本国内の台風ならともかく、現地の天候不良だと日本に情報が伝わってこないので、お客さまとしては荷物が遅れている理由がわからず困惑されることもあるんです。
--- なるほど。
一番大変だったのは2018年の台風21号。関西国際空港が高潮の被害を受け、貨物の取り扱い業務ができなくなり、貨物をすべて東京に運んだんです。そのため東京の貨物が一気に増えました。飛行機も関空に着陸できないので、荷物がぜんぶ東京に来て、関西に到着予定の貨物が東京にあったりと大混乱でした。連絡橋の損傷などにより、その後もすぐには関西国際空港が復旧できず、問い合わせが殺到し、2ヶ月くらいは慌ただしい状況が続きました。毎年9月になると当時のことを思い出します
--- 当時はどういった業務を担当していたんですか?
当時は輸入貨物の問い合わせチームにいて、お客さまからかかってきた電話を受けていました。また、オペレーターが対応しきれない電話に出ることもありました。
当時は、お客さまにお荷物のご案内をしたくても、「お待ち下さい」としか言えない状況で。責任者として電話を代わっても同じことしか言えないので、お客さまに対して本当に申し訳なく感じました。どうにかしてあげたいけど、自分ではどうにもできないことが心苦しかったです。
--- それは大変でしたね……。
ですが、その経験があって強くなりました。コロナ禍初期、マスク需要が一気に増えたことで流通に混乱があったり、個人のお客さまの通販が増えたりという、いわゆる「コロナショック」があって忙しかったのですが、関空の件を経験していたので、「なんとかなる!」と思えましたね。
--- 職場の雰囲気について教えてください。
とてもアットホームな職場です。研修や駐在で中国に行っていた人や中国人スタッフなど、中国に馴染みがあるメンバーでたまに「中国会」を開催しています。開催と言っても、おいしい中華料理を食べに行くだけですけど(笑)。
--- 中国以外の国にも、スタッフはいらっしゃるんですか?
はい。アジアが多いですが、ヨーロッパやアメリカにもいますね。現地の方を採用していることもあるし、日本から社員が出向している場合もあります。
--- 海外とのやりとりもあるとのことでしたが、さまざまな国にいる人とコミュニケーションをとるのは難しさもありそうですね。
やっぱりお互いに相手の置かれた状況が見えづらいので、すれ違いはありますね。こちらにはこちらの事情があるのに、それを知らない相手から「なんでできないの?」と言われてしまうことも……。そんなときは先輩や同僚に相談します。どんなことで困ったかを共有すると、みんなが話を聞いてくれて、「じゃあこうしよう」と解決策を提案してくれるんです。
--- 素敵な職場ですね! 先輩や同僚からのアドバイスで印象に残っているものはありますか?
現地から言われたことに対して、私は理不尽だと感じたんですが、海外勤務を経験したことのある上司に話したら「今、現地はこういう状況だから……」と説明してくれて納得できました。やっぱり上司のほうが様々な事情を知っているので、共有してもらえるのは助かります。
--- 新川さんは、労働組合の活動の一貫として、2021年から始まった航空連合の女性リーダー研修「WINC(ウィンク)」に参加されていますよね。
どういった研修を受けられたのでしょうか?
組合に所属する女性メンバーが集まる年3回の研修で、講師の先生のお話を聞いたり、5~6人のチームに分かれてグループワークをしたりします。
特に印象に残っているのは「自信」についてのお話。女性は、生まれ持ったホルモンや社会的評価などの要因から、自分を過小評価しがちなんだそうです。それを知った上で、「もっと自信を持っていろんなことにチャレンジしよう」というお話で。そのお話が私の中でとても響いて、それ以来、日々の業務の中でやるかどうか迷うことが生じたら、「やってみる」を選ぶようになりました。
--- 最後に、「海外とつながる仕事をしたい」と思っている方に、何かメッセージがあればお願いします。
「航空業界」「海外とつながる仕事」といえば旅客をイメージする方が多いと思いますが、物流も大切な仕事です。特にコロナ禍になってからは、旅客部門の方から「貨物のみなさん、頑張ってますね」と声をかけられることが増えました。
たとえ人の動きが止まったとしても、止まらないのが物流です。生活やビジネスに欠かせない重要な役割であり、やりがいのある仕事なので、ぜひ物流業界に来てほしいなと思います。
(文:吉玉サキ、写真:大久保惠造)
ライター・エッセイスト。北アルプスの山小屋で10年間働いた後、2018年からライターとして活動。著書に『山小屋ガールの癒されない日々(平凡社)』『方向音痴って、なおるんですか?(交通新聞社)』がある。
1986年 東京写真専門学校卒業。1987年Studio GITANES 小島由起夫氏に師事し、1997年 第26回 APA展 入選。
2005年 Studio MERCADO 設立。会社案内、学校案内、企業PR、パンフレット、カタログ、広告、Webの撮影など幅広く行う。