空港の裏方お仕事図鑑2017

presented by JFAIUロゴ 航空連合

「『空港を支える』バトンを、これからを担う人へ」ANAエアサービス佐賀 運送サービス課 川﨑さんインタビュー

写真:飛行機の前に立つ川崎さん

正確な時を刻みながら、乗客と貨物を乗せて運航を続ける飛行機。
地上では、空港の定時性と安全性を守るため、日夜飛行機と向き合うスタッフたちがいます。

飛行機の一番近くで、分刻みのスケジュールで業務を行うグランドハンドリングは、航空業界において花形の仕事です。そこで働く、ANAエアサービス佐賀 運送サービス課 グランドハンドリンググループ11年目の川﨑さんにお話を聞いてきました。

理想の仕事と航空業界とのギャップに悩み、一度はやめようと思ったこともあった川﨑さんですが、現在では空港を動かすキーマンに。そんな川﨑さんは、「佐賀空港を九州を代表する場にしたい」と話します。

それまでの経緯を、彼の半生から探ります。

写真:飛行機
深夜2時半から当日の最終便まで神経を研ぎすませながら、飛行機を見守ります

はじめて乗った飛行機で出会った「汗をかいて、外で働く」仕事のかっこよさ

--- 今回、飛行機の乗客としては見えなかったエリアに入らせてもらいましたが、手荷物の積み込みや飛行機の離着陸の誘導など、最後はすべて人の手で行うのが印象的でした。

飛行機が離着陸する際に、「地上では何がなされているのか」は気づきにくいですよね。

主な業務のマーシャリング(着陸した飛行機を正しい停止位置に誘導すること)やプッシュバック(お客様の搭乗が完了した飛行機を、特殊車両で押し出すこと)など、飛行機の運航を支えているのは、まだまだ人の力であったりするんです。

写真:笑顔の川崎さん

--- ただ一方で、作業の遅れが空港全体に大きな影響を与えかねない業務ともいえますが、川崎さんはなぜこの仕事を選ばれたのですか。

幼いときに見た、空港スタッフの姿が頭の片隅にあったからです。空港内の飛行機のすぐ近くで働く、帽子にイヤーマフ(耳栓)をつけた整備士のユニフォーム姿が、小学校1年生の私にはとてもかっこよく見えました。

はじめて乗った飛行機で、窓からその姿を眺めていたら、僕たちに向けて手を振ってくれたんです。うれしかったな。

そんな記憶があったから、高校卒業のタイミングで新設されたばかりの専門学校で、空港のエアポートサービスを学ぼうと思いました。

--- 専門学校に入学してからはどうでしたか。そのままANAエアサービス佐賀に入社したのですか。

実は、航空業界の道を諦めようかと悩んでいました。

専門学校では、2年目から福岡空港での研修があり、はじめは手荷物の仕分けを、その後国際線のカウンター業務を1年ぐらい任されましたが、それがもう慣れなくて、ただただ辛かった(笑)

当時は、「汗をかきながら、外で働きたい」と考えていたのと、アルバイトをしていたガソリンスタンドのオーナーから「そろそろ、正社員はどうだ」と誘われたこともあって、心が傾きかけていました。

そんなタイミングで、先生から「佐賀空港で深夜便を運航するようになるから、グランドハンドリングに応募してみないか」と声をかけてもらいました。私は、生まれも育ちも佐賀でルーツがここ。地元にいる母も喜んでくれたので応募しました。

それから現在まで11年間、佐賀空港で働いていますね。

--- すごい、いいタイミングでしたね。

もう、運命的で。これを逃したら佐賀空港にはいませんでした。だから、人一倍ここに愛着があるんだな、と今になって思うんです。

「人がやっていないことをやれ」先輩から教わった心構えとは

--- ご自身の理想に近い仕事に就けたと思いますが、その後はいかがでしたか。

写真:ハンドルを握る川崎さん
高所での作業など、安全に注意しながら特殊車両に乗って業務を行います。

入社して2年間は、とにかく不安でしたね。先輩からは、「相手の動きを読め。人がやっていないことをしろ」と口すっぱくいわれ、何度も悔しい思いをしました。

ただ今では、仕事の幅も広がり、全体の管理者になり、その言葉の意味を実感しています。飛行機が離発着する過程で、旅客係員・整備士・グランドハンドリング・貨物サービス、それぞれが協力して仕事をつないでいかないと、飛行機は遅れてしまいます。

お互いの力を発揮する上で、相手の動きを見なきゃいけないし、一人ひとりが率先して不足を補うことが求められることに気づきました。

--- 一人では完結しない仕事なんですね。でも、仕事をしていくうちに気が緩みがちになりませんか。

はい。大きな声ではいえませんが、昔、業務中にミスを起こしてしまい、上司はじめ大勢のかたに迷惑をかけたことがあります。「あのとき、確認しておけば……」と業務中に何度も頭によぎることも。

その日から、業務の確認はしっかり声を出して指差し確認すること、また、時間が限られている仕事だからこそ、一呼吸を置くことを心がけています。

その場で立ち止まり、深呼吸してから確認すると、自分の記憶に残るんですよね。

写真:打ち合わせ中
全体のスケジュールと動きを見てコミュニケーションをとることが大切です。

ただ、入社してまもない後輩だと、業務が忙しくて慌ててしまう。

私も入社したころは、飛行機を誘導するときに「本当に止まるのかな」と恐怖心で足がブルブル震えていましたから。平常心を保てないと周りが見えなくなり、ミスが起こりやすくなります。

だから、余裕がない後輩がいたら肩を叩いたり、声をかけて、1つのことに集中しすぎないよう気を配っています。私のような失敗を体験することも大切ですが、後輩たちには自分が経験した失敗と同じことはできるだけさせてくないですから。

--- 後輩思いなんですね。グランドハンドリング業務を見学しているときに、「川崎さんは、普段おちゃらけているけど、根は真面目で嘘をつけないタイプ」だと聞いていたので、まさにその通りだと思いました。

私は、元野球部で根は体育会系だから、厳しいときは厳しいですけどね(笑)

佐賀空港ならではの魅力を感じてほしい

写真:室内での川崎さん

--- グランドハンドリングの仕事は、「対飛行機」「対人」の2つの面があると思いますが、どんなところに仕事のおもしろさがあると感じていますか。

「対飛行機」と「対人」、どちらも面白みがありますね。「対飛行機」は、常に到着する手荷物の数が違うし、天候によって業務が左右されることも。でも、日々変化があって楽しいですね。

「対人」では、かけっこのリレーのように、障害が大きければ大きいほどチームが団結するし、ゴールしたときの達成感が気持ちいい。仲間から渡されたバトンは、絶対手放したくはありません。

--- 個人としては、どのようなところがやりがいにつながっていますか。

ANAエアサービス佐賀は、個人に任せる裁量が大きく、自分の頑張りで資格を取得すると、特殊車両に乗ることができたり、新しい業務にどんどん関わることができます。

たとえば、私はお客様の荷物を貨物室から取り出す特殊機材のハイリフトローダーとベルトローダー。整備士のアシスト業務、今はマスターインストラクターの資格を得ました。

マスターインストラクターは、空港の代表として羽田空港で行なわれる会議に参加し、規定の見直しに携わったり、他空港を視察することができます。
他空港の取り組みを見学することで、ANAエアサービス佐賀のお客様満足度の向上に活かしたり、働きやすい職場を作るために5S活動(社内の整理整頓など)に繋げてきました。

--- 県外のいろいろな空港を見てきて、佐賀空港ならでの魅力はどこだと思いますか。

写真:川崎さん横顔

佐賀空港で、空港のハンドリング業務をしているのは私たちANAエアサービス佐賀だけ。そのため、お客様が飛行機に搭乗する時の通路を自分たちで独自に飾り付けできるんです。「お客様に喜んでいただけるためには?」とグランドハンドリンググループのメンバーで考えられるのは佐賀ならではですね。

あと、空港周辺にたぬきや鳥が住んでいたりと、自然と空港が共生するところが魅力ですね。佐賀らしいといえば佐賀らしいですが、飛行機のエンジンなどに鳥が飛び込むバードストライクも多いんです。

だからこそ、安全にはより一層気をつけているところなんです。

佐賀空港を九州の玄関口にしたい。「佐賀空港に、また来たい」と思ってもらうために

--- 佐賀らしさを楽しむ川崎さんが、これから勤続15年、20年目に向けて取り組みたいことはありますか。

「佐賀は通り道」というイメージを払拭して、佐賀空港を九州の玄関口にしたいと思っています。

九州の地形からみると、佐賀はおへその位置にあり、福岡、長崎、熊本にアクセスしやすい場所なんです。地元の友人からは、「佐賀空港で働けるなんて、うらやましいな」と言われることもあります。

便数も多い福岡空港が、九州の代表格ですが、今後は佐賀空港も便数が増えていく予定ですし、佐賀空港の認知度を上げるためにも、私たちは飛行機の運航に関する不具合ゼロを目指していきたい。

--- 就航する便数が増えると、お客様や貨物も増え、一層高度なハンドリングが求められると思います。そんななかで、不具合ゼロを実現するために、後輩たちにはどんな言葉を送りますか。

写真:会話中の川崎さん
次世代の成長が、これからの佐賀空港を支えます

後輩には、航空業界への興味をもっと持つように伝えたいです。あと、彼らがいろいろな意見をいえるように聞き役に徹したいと思ってます。

たとえ未経験者であっても着眼点は鋭い。「車両はどうして左ハンドルですか?」とか、私たちにとって当たり前だと思うことをどんどん突っ込んでくれる。

そういった視点を否定せず、上手に汲み取っていきながら、現在の業務から、お客様、佐賀空港へと興味の幅を広げてほしいと思います。

--- 川崎さんは、子どものときに出会った整備士さんがお客様に手を振ってくれたからこそ、今がありますからね。

はい。私自身も、今でも搭乗いただいている子どもたちや屋上で見送りにきた人たちに手を振っています。いつか、記憶を思い出し、「佐賀空港に、また来たい」と思ってくれる人が増えれば、結果として佐賀空港が九州の玄関口になると信じていますから。

これから一緒に働く方とも、子どもたちが憧れる職業であり続けることを、ともに目指していきたいですね。

(文・写真:水澤陽介)

ライター:水澤陽介

フリーライター。新潟県生まれ、2013年に沖縄移住。ライターとして、地域にある「ひと・もの・こと」を中心に取材。現在は、おきなわマグネット/はたラボなどで執筆、企業広報を取り組んでいます。ライフワークとして、PechaKuchaGinowanコーディネーターにも関わる。ブログにて個人活動を発信中(https://medium.com/yosukemizusawa

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